キシリトールは虫歯にならない?砂糖は虫歯の原因か?

虫歯になりにくいをうたい文句に、キシリトールを使用した食品がよく目につきます。 キシリトールって何ですか?

 キシリトールは、天然界では、イチゴ、ラズベリー、カリフラワー、レタスなどの果実や野菜に多く含まれている、糖アルコールという炭水化物の一つです。ただし、キシリトールは天然界からはごく少量しか抽出できません。したがって、実際のキシリトールは、工業的に化学合成で人工的に作られています。つまり、白樺やトウモロコシの芯などに含まれている、キシランという多糖を分解して木糖(キシロース)にし、この木糖から高圧接触還元(水素添加)法で作られているのです。キシリトールは、砂糖と同じくらいの甘さで、体の中で代謝されるのにインスリンの助けをかりません。このような性質から、血糖値の高い人、つまり糖尿病患者のエネルギー源として医薬分野で研究開発され、使用されています。さらに、虫歯菌の生育に使われないため、虫歯になりにくいこと、また、冷涼感が強いなどの特徴がありますので、食品分野でもチューインガム、キャンディー、タブレット、アイスクリーム等の菓子類に多く使用されるようになりました。良く目につくのは、そのためです。


虫歯になりにくいのは本当ですか?

 虫歯は、食品中の炭水化物(砂糖も含まれます)を虫歯菌(S.ミュータンス細菌)が食べて酸を作って、歯の表面のpHを低下させ溶かすことでなります。また虫歯菌の作る、不溶性多糖は歯垢の原因になります。キシリトールは酸生産試験で、虫歯菌により利用されず、酸ができないことが確認されています。このことから、虫歯を助長しない甘味料として、広く用いられるようになりました。マルチトース、ソルビトール、ラクチトース、エリスリトールといった糖アルコールにも、同じ様な性質があることが知られています。


ちょっと前の話ですが、「キシリトールが普及しているフィンランドでは、虫歯の発生が少ない」というテレビコマーシャルを見かけました。砂糖の代わりに、キシリトールがたくさん使われているから、虫歯が少ないということですね?

 いえいえ、そのコマーシャルには、やや表現に疑問があります。直接砂糖とは対比はしていませんが、そう連想させるに充分な印象があるからです。一人当たり年間の砂糖消費量は、日本が20kg弱で、北欧フィンランドでは40kgです。ですから、「フィンランドでは、日本の二倍の砂糖を消費していますが、虫歯の発生が少ない」のです。これをコマーシャル風に言い換えると、「砂糖をたくさん使うフィンランドでは、虫歯の発生が少ない」となります。虫歯予防のため、砂糖の代えて、キシリトールを使っているわけではないのです。フィンランドで虫歯が少ないのは、食生活の中で、キシリトールを使ったチューインガムなどを含め、しっかりとした虫歯予防習慣が根付いているからなのです。