砂糖の特性
砂糖は水によく溶ける
皆さんは砂糖が水によく溶けることはご存知だと思いますが、実際にどれくらい溶けるかと言いますと、20℃の水100 gに対しては2倍の200 g溶かすことが可能です。水の温度を高くするとより多くの砂糖が溶けるようになり70℃で325 g(3倍以上)、90℃で420 g(4倍以上)溶かすことができます。
なぜ砂糖は水によく溶ける?
水は分子式で表すとH2Oであり、構造式は“H-O-H”となります。そして、この水分子中のO(酸素原子)は少しだけマイナス(δ-)に、H(水素原子)は少しだけプラス(δ+)になっています。また、砂糖の主成分であるショ糖(スクロース)分子中にある“-O-H(水酸基)”のOも少しだけマイナスに、Hも少しだけプラスになっています。
このようにそれぞれの分子の中にプラスの部分とマイナスの部分が存在すると分子同士が引きつけ合って、水分子がショ糖分子の“-O-H”を取り囲む状態になり水に溶けることになります。ショ糖分子には“-O-H”がたくさんあるため、砂糖は水によく溶ける特性(親水性)を持ちます。
砂糖の親水性による様々な効果
砂糖は高い親水性を持っていることにより、食品に対して様々な効果を発揮することが知られています。それらのいくつかを紹介していきます。
食品を腐りにくくする
食品の腐敗は微生物によって引き起こされますが、微生物は水が無いと活動できません。食品を砂糖漬けにすると、砂糖が食品中の水を引きつけて保持(保水)するため微生物は水が利用できず活動できなくなるため、食品が腐りにくくなります。
お肉や卵を柔らかくする
砂糖が溶けてお肉や卵の組織に入り込むと、砂糖により組織の中の水分が保持されます。そうすると、お肉や卵を加熱した時にタンパク質の収縮が抑制されて、加熱調理によってお肉や卵が硬くなるのを防ぎます。
泡立ちを保つ
卵白を泡立てメレンゲを作る際に砂糖を加えると、砂糖が水分の分離を抑制し、また砂糖が溶けることで粘度が増して泡立ちを保つことができます。ホイップクリームにおいても砂糖の保水性により泡が安定化すると言われています。
ご飯やお餅が固くならない
ご飯やお餅の主成分であるデンプンは、水を加えて加熱するとデンプン分子の中に水が入り込み、膨らむため柔らかくなりますが、冷めてくるとデンプン分子と水が相互作用してデンプン分子が集まり固くなってしまいます。しかし、砂糖を加えると砂糖が水を抱え込んでデンプン分子と相互作用できる水が少なくなるため、ご飯やお餅を柔らかいまま保つことができます。
ジャムのとろみをつける
果物に含まれるペクチン(食物繊維の一種)が網目状に繋がることでジャムにとろみが付きますが、砂糖を加えると砂糖が水分を抱え込んでペクチンの周りの水が減るため、ペクチン同士の繋がりを促進します。また、砂糖が水分を保持しているのでしっとりしたジャムになります。
食品の酸化を防ぐ
空気中の酸素が食品中の水分に溶け込むことで、食品成分と酸素が反応(酸化)して食品の風味が損なわれてしまうことがあります。一方で砂糖が入っていると、水分に砂糖が溶け込んでいるため、酸素が溶け込みにくくなり食品の酸化が抑制されます。