ビート糖製造の主要工程
ビート糖の製造工程は、以下の11工程からなります。(グラニュ糖の場合)
受入
原料ビートを、トラックで工場に搬入します。
ビートは10月中旬〜11月下旬にかけて収穫します。
これに合わせてビート糖製造工場は、10月中旬に操業を開始します。
ビートは畑で葉を切り落とし、根部のみを工場に搬入します。
運搬にはトラックが使われ、工場の受入施設(ビートビン)にビートを投入します。
ビートビンから工場までは、水で移送します。
洗浄
付着土砂、夾雑物を洗浄除去します。
原料ビートは水で押し流した後、ベルトコンベアで工場内に運ばれます。
原料ビートには、土砂、石、ビートの葉、雑草などが付着しています。
これらの付着物は、洗浄機を用いてビートから除去し、裁断の障害にならないようにします。
裁断
裁断機により、細長く切断します。
洗浄後、裁断機にかけ、4〜5m/m角に細長く切断し、糖分を抽出しやすくします。
裁断された細長い切片は、コセットと呼ばれます。
浸出
浸出塔で、温水中にて糖分を抽出します。
コセット(細かく裁断されたビート)は、浸出塔にて65℃〜75℃の温水中で糖分を抽出します。
温水の使用は、糖分抽出の促進と微生物汚染防止に効果があります。
糖分抽出液はロージュースと呼ばれます。
ロージュースのショ糖(砂糖)の純度は88〜92%です。
すなわち、非糖分が固形分当たり8〜12%含まれています。
糖分を取った残りの繊維分(ビートパルプ)は、脱水、乾燥、成形して、牛用の飼料として利用します。
清浄
炭酸カルシウムにより、非糖分を吸着除去します。
ロージュースに石灰液(成分はCaO。ライムミルクと呼ばれます。)を添加し、タンパク、ペクチン等を凝集させます。
次に炭酸ガスを吹き込み生じた炭酸カルシウムに、非糖分凝集物を吸着させ、ろ過機で除去します。
このろ過機で除去した炭酸カルシウム+非糖分の脱水物は、ライムケーキと呼ばれます。
石灰処理+炭酸ガス処理後の糖液のショ糖純度は、90〜94%と、ロージュースより約2%ショ糖純度がアップします。
精製
イオン交換樹脂にて、イオン性非糖分を吸着除去します。
清浄後の糖液はイオン交換樹脂に通液して、アミノ酸、有機酸、灰分、色素等の非糖分を吸着除去します。
樹脂処理後の糖液のショ糖純度は約98%です。すなわち、精製工程にて糖液の純度は4〜8%アップします。
イオン交換樹脂による吸着除去の代わりに、クロマト分離を行なう場合もあります。
また、脱塩工程を省略する場合もあります。
濃縮
非糖分を除去した糖液を、濃縮缶にて3〜4倍に濃縮します。
脱塩後の糖液は、濃縮缶にて、水分を蒸発させ3〜4倍に濃縮します。
濃縮缶は、複数のものを直列に配置し、順次濃縮する方法が一般的です。
濃縮後の糖液は、シックジュースと呼ばれています。
シックジュースの固形物濃度は60〜70%です。シックジュースは次の結晶化工程に送られますが、シックジュースの一部をタンクに貯蔵しておき、原料ビートを処理した後の砂糖製造に利用する場合もあります。
結晶化
結晶缶にて、砂糖を結晶化します。
シックジュースを、結晶缶内で濃縮して、砂糖を結晶化させます。
結晶化が終わった糖液は、砂糖結晶と糖蜜の混合物となっており、マスキットと呼ばれます。
分蜜
分蜜機で、砂糖と糖蜜を分離します。
マスキットは分蜜機に送られ、遠心分離により、砂糖と糖蜜に分離します。
砂糖の結晶の表面に付着した糖蜜は、散水にて洗浄します。
分蜜直後の砂糖は、水分が多くウエットシュガーと呼ばれます。
糖蜜にはまだ砂糖が多く含まれており、通常は、クロマト分離を用いて更に砂糖を回収します。
乾燥
ドライヤーで、砂糖を温風にて乾燥後冷却します。
ウエットシュガーをドライヤーにて温風乾燥後クーラーで冷却します。冷却後、篩(ふるい)に通し、塊と粉糖を除き製品とします。
包装
包装機で、砂糖を包装します。
乾燥、篩い分けした砂糖は、一定量ごとに包装して、倉庫に貯蔵しユーザーに出荷します。
包装形態は家庭用の500g・1 kg包装、業務用の20kg・30kg包装、大口ユーザー向けの1,000kgフレキシブルコンテナ包装など数種類の形態があります。
また、シュガーサイロに貯蔵し、出荷時に包装する場合もあります。