甜菜は生で食べられますか?

甜菜(ビート)はどのようなものですか?

 ビートはホウレンソウと同じヒユ科の植物で、地上部にはホウレンソウを大きくしたような葉がしげります。別名サトウダイコンとも呼ばれるように、根が肥大し、そこに糖分が蓄えられます。根の形は、丸大根やカブに似ています。秋に収穫し、根と葉を切り離し、根は製糖工場に運ばれて砂糖の原料となります。葉は家畜の飼料として使ったり、堆肥や緑肥のいわゆる「土作り」として、良質の有機質資材として畑で利用されます。また、砂糖を取った後の根は、ビートパルプといって家畜の飼料として利用されます。


甜菜(ビート)は生で食べられますか?どんな味がするのでしょうか。

 甜菜は生でも、加工された状態でも食卓に上ることはありません。根を生で食べると、甘い味があり口当たりは良いのですが、アク(灰汁)が強く、土臭いと形容される不快な後味が残ります。煮込んだ場合には煮汁がアクで黒ずみ、根には残ったアクによる土臭さがあり、やはり食用には向きません。煮だした汁は黒く、土臭いのですが、甘みがあり、終戦後の砂糖が貴重品だった時代には自家製の甘味料として利用したこともありました。漬け物にするとか油で揚げるといった料理法を聞いたことがありますので、工夫次第では食べることができるかもしれませんが、一般的ではありません。葉は一見ホウレンソウに似ており、ゆでて食べると甘みがあります。しかし、やはりアクが強く、食用にはしません。

以前どこかで食用ビートという言葉を聞いた記憶があります。確か缶詰で、ビートが入っていると書かれていたものを見かけたのですが…

 肥大した根を食用とする食用ビートは確かにあります。日本語でカエンサイ、英語ではテーブルビート、あるいは単にビーツといいます。普通栽培されるのは赤い色の品種で、外見はハツカダイコンを大きくしたような色と形です。根を輪切りにすると中まで赤く、濃い赤色の輪が木の年輪のように同心円状に並んでいます。生のままあるいは下ゆでしたものをサラダや煮込み料理に使用します。また、野菜ジュースの原料としても使用されています。味は甘みがあり、甜菜同様に土臭さもあります。日本では馴染みの薄い野菜ですが、欧米ではよく利用されており、ボルシチというウクライナおよびロシアの伝統的な料理には欠かせないものです。甜菜の仲間は変異に富んでいることで有名です。栽培されている甜菜の仲間には、砂糖を取るための甜菜、根を食用とするカエンサイの他に、根を家畜の飼料とする家畜ビート、根は肥大せず、葉を食用とするフダンソウがあります。フダンソウは、ホウレンソウと同じように料理して食べることができ、「うまい菜」の商品名で家庭菜園用の野菜として販売されているので、食べたことのある方がいるかもしれません。