異性化糖って、何だろう?

ジュースなどの原料に、「異性化糖」の表示を見かけます。異性化糖って何ですか?

 異性化糖は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)を主成分とする液状糖です。異性化糖製品には日本農林規格(JAS)が制定されていて、果糖含有率(糖のうちの果糖の割合)が50%未満のブドウ糖果糖液糖、50%以上の果糖ブドウ糖液糖、そしてブドウ糖果糖液糖あるいは果糖ブドウ糖液糖に10%以上の砂糖を加えた砂糖混合異性化液糖があります。異性化液糖はとうもろこし、馬鈴薯あるいは甘しょ(サツマイモ)などのデンプンを原料に作られています。

そこから、どういう方法で異性化糖を作るのですか?

 異性化糖をデンプンから作るためには、三種類の酵素反応を必要とします。一番目に、ブドウ糖がたくさん結合して構成されているデンプンに、水と液化酵素(アルファーアミラーゼ)を加え、95℃前後で分解します。これは液化といって大きな分子のデンプンをある程度小さく分解する作用があります。液化終了後55℃程度まで冷却し、二番目に糖化酵素(グルコアミラーゼ)を加えて、さらに小さくブドウ糖にまで分解します。三番目に60℃で異性化酵素(グルコースイソメラーゼ)を加えて反応させます。その後、精製・濃縮すると、果糖分42%のブドウ糖果糖液糖を得ることができます。さらにクロマトグラフィーという分離装置を用いることによって、果糖分55%のものも作れます。これらの製造に使用される酵素は、いずれも安全な微生物の作り出すものです。一方、砂糖は甜菜(ビート)、あるいは甘蔗(サトウキビ)から熱水抽出・精製して作られ、酵素反応は行われません。同じ甘味料でもずいぶんと作り方が異なるものです。  

甘みなどは砂糖と同じなのですか?

 砂糖はブドウ糖と果糖が一個ずつ結合した炭水化物です。一方、異性化糖はブドウ糖と果糖を主成分とするものです(結合はしていません)。砂糖の甘みの強さ(甘味度)を100とすると、ブドウ糖の甘味度は65~80、果糖は120~170です。その結果、異性化糖の甘味度は、果糖分42%の異性化糖が70~90、果糖分55%の異性化糖が100~120とされています。ただし甘味度は温度の影響も大きく、特に果糖の場合高温では砂糖の60%の甘味度しかなく、40℃で砂糖とほぼ同一、それ以下の温度では砂糖よりも甘くなる傾向があります。従って、ブドウ糖と果糖の混合物である異性化糖の甘みの質は、これらの性質に左右されます。また、ブドウ糖と果糖のいずれも砂糖より甘みが口中に残りにくい性質があります。

スーパーマーケットなどで、「異性化糖」そのものは見かけませんが、
どういう使われ方をしているのですか?

 異性化糖は固形化・粉末化が難しく、砂糖のように袋詰めにできないので、一般消費者向けにはほとんど販売されていないと思います。もっぱら食品製造メーカーなどの大手ユーザーに販売されています。異性化糖の価格は安く、果糖分55%の異性化糖の場合で砂糖の約7割程度です。食品分野では、清涼飲料・パン・缶詰・乳製品などで砂糖と同様に大量に使われています。また、低温で甘味度が増し、清涼感も強くなることから、冷菓にも広く用いられています。