お砂糖を食べると頭がよくなる?

「お砂糖は、脳の唯一のエネルギー源だ」とはどういう意味でしょうか?

栄養学的に言えば、「ブドウ糖が脳のエネルギー源だ」というのが、より適切な表現です。

 脳細胞は通常血液中のブドウ糖(グルコース)をエネルギー源にしていますので、血糖値(血液中のブドウ糖の量)が一定以上なければ、脳の働きは悪くなり、疲れを感じたり、イライラしたり、集中力が低下します。私たちの身体の中では、食品中の様々な炭水化物(三大栄養素の一つ、糖質のこと)を消化して、ブドウ糖を作っています。つまり、お米やパンのような炭水化物が含まれている食品を食べて、常にブドウ糖を作り出しているのです。ことに砂糖は、ブドウ糖と果糖(フルクトース)が1個ずつ結合したとても簡単な構造の炭水化物で、消化されやすいため、速やかに体内に吸収され、血糖値を上昇させ、脳の働きを活発にさせます。砂糖は、脳の疲れをさっととって、スッキリさせる最適な食品です。なお、飢餓状態で体内のブドウ糖が枯渇するような非常事態では、脂肪からケトン体が作られ、脳の代替エネルギー源になります。


ちょっと前、砂糖は「子供がキレる」原因だという記事を見ましたが…

 砂糖が子供のキレる原因というのは、まったく誤った認識です。砂糖は消化・吸収が速いので、これを食べると血糖値がすばやく上昇します。私たちの身体は、これを調節し適正値に下げるために、インスリンというホルモンが速やかに分泌されるようになっています。ところが、このインスリンを出す細胞が異常に増殖して、インスリンが過剰に分泌され、逆に血糖値が下がりすぎてしまう「インスリノーマ(反応性低血糖症)」という病気があるのです。この病気が、不安、躁うつ病、精神分裂病、その他様々な精神性非行や犯罪の原因になっているという説が、その昔アメリカを中心に流布したことがありました。これが、砂糖有害論(=キレる)です。しかし、インスリノーマは非常にごくまれな病気で、誰にでも起こるものではありません。また、インスリノーマが精神性異常行動の原因である科学的根拠はまるでなかったのです。「砂糖=キレる食品」というのは、あまりにもひどい誤解の一つでしょう。(もし、現代の栄養学者または医師から発言されるとすれば、「時代錯誤の知識」をそのまま持っている、プロとしては極めてレベルが低いと言わざるをえません)適切な糖分の摂取は、脳・神経系の疲れ(イライラ、集中力の低下)をとって、むしろ精神安定効果が期待できるのです。同様に、「砂糖は骨の中のカルシウムを溶かす」とか、「砂糖を食べると血液が酸性になる」といったことも、まったくの誤りです。