[Raffinose]
ラフィノースはビート(砂糖大根)から分離精製して得られる天然のオリゴ糖です。
植物界に広く存在しており、ビート、ユーカリ樹液、大豆等に比較的多く含まれています。
ラフィノースは、ビート糖の副産物であるビート糖蜜からクロマトグラフ法によって取り出され、精製結晶化して得られます。(ニッテンラフィノースの<ニッテン結晶ラフィノースの製造工程>参照)化学構造式は右図の通りです。D-ガラクトース、D-グルコースおよびD-フラクトース各1分子から構成され、ショ糖にガラクトースが結合した形の三糖類です。
数あるオリゴ糖のなかで、全く吸湿性がない唯一のオリゴ糖です。
日本甜菜製糖(株)では、ラフィノースを高純度の結晶にして、皆様にお届けいたします。
ラフィノースは北海道の大地で丹精込めて育てられたビート(甜菜)から抽出・精製された世界で唯一の高純度結晶オリゴ糖です。秋の収穫時期になり気温が低くなるとビート自身が凍結を防ぐために細胞内にラフィノースを蓄え始めます。厳しい自然環境の中で生まれた不思議なオリゴ糖です。
ラフィノースは胃や小腸で消化酵素によって消化吸収されることなく、大腸に達します。大腸に達したラフィノースは腸内の善玉菌であるビフィズス菌の増殖源となり、悪玉菌といわれる大腸菌・ウェルシュ菌等を駆逐します。
ラフィノースは甘味度は砂糖を100とした場合、20%強です。砂糖に極めて近い上品な甘味を有しています。
ラフィノースは、胃や小腸で分解されませんので、エネルギーになりにくい糖です。
ラフィノースは、他のオリゴ糖にみられる酵素を利用した製造法ではなく、ビート糖蜜から分離・精製して得られる純粋な天然の物質です。公的試験機関による急性毒性試験・変異原生試験の結果、安全であることが確認されています。
ラフィノースは結晶オリゴ糖ですから、極めて吸湿しにくい特長を有しています。湿度90%で保存しても全く吸湿しません。
加熱安定性は砂糖とほぼ同等であり、140℃までは安定で、レトルト食品などに問題なく使用できます。180℃まで加熱すると、メリビオースとフラクトースに分解してきます。しかし、メリビオースは安定で大部分残存します。
pH3.5、90℃30分間加熱でもほとんど分解せず、砂糖と同等またはそれ以上の安定性があります。pH3.5以上で加熱しますとメビリオースとフラクトースに分解しはじめますが、メビリオースは安定でそれ以上分解しません。
成人を対象にした臨床試験の結果、ラフィノースを1日 3g以上摂取することで、摂取量に依存して腸内ビフィズス菌が増加することが明らかになっており、便通の改善や腸内腐敗物質を低減させる効果が確認されております。
文苑(ふみぞの)松田皮膚科(北海道釧路市)の松田三千雄医師より「ラフィノースのアトピー性皮膚炎に与える影響」とする研究が発表されております。それによれば、
『腸内の常在真菌であるカンジダ菌を抑制することによるアトピー性皮膚炎の治療効果を目指すために、甘い物、果物、アルコール過多といったカンジダ増殖因子を除くべく患者に対してこれらの除去を指導した。その上で1~2週間経っても改善効果が不十分な患者に対し、上記の食事の改善は継続した上で1~2週間、最大6週間ラフィノースを投与、腸内菌叢改善を通じてのカンジダ抑制効果の可能性に期待し、経過をみた。
投与量は大人における腸内細菌叢改善が期待出来る最小有効量、3.0g/日を基に
乳児 | 1.0g/日 |
---|---|
1歳 | 1.0g/日 |
3歳 | 2.0g/日 |
6歳 | 3.0g/日 |
成人 | 6.0g/日 |
結果、対象50例(平均年齢4.2歳、0~23歳男性23名・女性27名)中著効22例(44%)、有効16例(32%)、無効12例(24%)、憎悪
0例(0%)。有効率(著効+有効)は38例(76%)であった。1例下痢が認められたものの投与量を軽減することで消失した。
ラフィノース投与による治療はナイスタチンによる抗真菌療法に比べて効果はやや劣るが副作用は極めて少なく、より安全な治療と思われる。ラフィノースに抗真菌剤療法の効果がある理由は不明である。腸内菌叢改善を通じて間接的にカンジダ菌を抑制することも考え得るが、ラフィノースが直接カンジダ菌に作用する可能性も否定出来ない。』
と、しております。
千葉大学園芸学部の真田宏夫教授は
『オリゴ糖がビフィズス菌を増殖させて悪玉菌を減らすことにより、腸内で発生する毒素を抑制して肝臓の働きを改善するだけでなく、オリゴ糖そのものに肝臓の働きを改善する作用があるのではないかと考え、ラットにガラクトサミンを与えることでガラクトサミン肝障害(アミノ酸の一種)というヒトの劇症肝炎に似た症状を起こさせ、ビフィズス菌増殖効果のあるとされる数種のオリゴ糖及びガラクトース単糖などを投与した結果、ガラクトースを含んでいるラクチュロース、ラフィノース、ガラクトオリゴ糖、ガラクトース及びラクトースにガラクトサミン肝障害発症抑制効果が認められた。
ビフィズス菌増殖効果を持つと報告されているオリゴ糖全てがガラクトサミン肝障害発症を抑制するとは限らない。また、ガラクトサミン肝障害発症抑制にはオリゴ糖中あるいは単糖としてのガラクトースが深く関与しており、難消化性のビフィズス菌増殖因子全てがこの効果を発揮するわけではないことも明らかとなった。』
としております。(平成7年5月第20回日本栄養食糧学会 日本栄養・食糧学会誌Vol.№3)
また、富山医科薬科大学第三内科渡辺明治教授より、肝硬変患者に見られる肝性脳症の治療に対するラフィノースによる治療の可能性を探った研究が発表されております。これによれば、
『肝性脳症の原因としては腸内細菌によって産生された毒性物質(蛋白分解生成物のアンモニア等)が障害肝で代謝・除去され難くまた、末梢血液中で増加して脳内に移行し神経毒性を発揮するからとされている。患者には蛋白摂取制限によりアンモニア生成の抑制を図る食事治療とラクチュロースやラクチトールといった難消化性二糖類の投与が行わている。
三糖類であるラフィノースを摂取すると二糖類の利用菌と同じか、または異なる細菌種によって利用されて血中アンモニアが更に低下する可能性がある。また二糖類の副作用である下痢がラフィノースでは少ないといわれ、これを用いることでより望ましい治療を行うことのできる可能性がある。
実際にアルコール性肝硬変に合併した慢性肝性脳症例(64歳)にラフィノース150g/日を投与したところ、ネオマイシン(抗生物質)投与と同様に症状の改善が見られた。
高アンモニアのラットに2日間で1.8gのラフィノースを投与したところ、同量のラクチュロースより血中のアンモニア濃度の低下作用が優れていた。
昏睡に至った肝性脳症患者(47歳)にラフィノース溶液(15%)1,000mlを1日3回に分けて直腸内に強制投与したところ意識の回復と共に血中アンモニア濃度の低下が観察された。以後、ラフィノースの継続経口投与により良好な経過を得た。』
(平成9年5月第20回日本栄養アセスメント研究会、平成10年4月第35回日本肝臓学会総会)
その他にもラフィノースは
など、その生理的効果が実用的、食品工業的に既に応用されています。
業務用途のみ販売申し上げております。