甜菜から砂糖を自分で作れますか?

甜菜(ビート)から自分の手で砂糖を作ってみたいのですが、できますか?

 味と効率をあまり考えなければ、可能です。農家のご老人に聞いた話ですが、戦中、戦後の物がなかった時、ビートを刻み、お湯で砂糖を煮出して、木灰を加えて不純物を沈殿させ、その上澄みを煮詰めてビートシロップを作ったそうです。

「ビートシロップ」の作り方を教えてください。

 まず、約1kgの甜菜を、4~5mm角の軸切りにし、重量の約2倍のお湯に入れます。
 水から煮ないのは、甜菜の酵素をお湯で失活させるためです。その後しばらく70℃位のお湯で煮出します。
 甜菜を引き上げ軽く絞ります。
 その後少量の石灰(液重量の0.1~0.3%位)を良くかき混ぜながら加えて、55℃から85℃位まで暖めます。この時、3回から5回に分けて石灰を加えると良いでしょう。
 放置しておくと、若干緑を帯びた黒灰色の沈殿ができるはずです。上澄みは黄緑色を帯びた琥珀色になっていると思います。
この上澄みを糸が引くくらいになるまで煮詰めると、ビートシロップの完成です。

ここで示した数値は、あくまでも目安ですから、色々な条件を試してみると良いでしょう。味に関しては、舌に残るえぐみがあり、ホウレンソウのにおいがします。甜菜がホウレンソウの仲間であることが、うかがえると思います。ちなみに、ロシアの漬け物やボルシチに使う食用赤ビートでは、糖分が低くてできません。

結晶を作ることは、難しいことなのですか?

 効率や収率を考えなければ家庭でもできます。先ほどの説明で作ったビートシロップに粉砂糖を少量入れ、良くかき混ぜて冷蔵庫に数日間入れてみましょう。粉砂糖を核にして、結晶が出ているはずです。しかし、作ったビートシロップの煮詰め方によっては、結晶が出にくい場合があります。

工場で糖液を結晶させて砂糖を作る工程も、同じ原理なのですか?

 液の中の砂糖濃度を飽和以上(過飽和状態)にして、溶解できない分の砂糖を結晶化するという意味では、原理は同じです。しかし、実際に工場で行っている結晶化方法は少し異なり、煮詰めて水を蒸発させることによって、過飽和状態にする「煎糖(せんとう)法」を用いています。それに対して、先ほどの冷蔵庫での結晶化は、冷却によって過飽和状態にする冷却結晶化です。身近な例では、蜂蜜を冷蔵庫で保存しておくと、底に白い結晶ができていることがあります。これも、冷却結晶化です。